今回我々は、これまでに投球障害を経験した選手と
投球障害を全く経験してこなかった健常な選手たちを
対比することによって、健常な少年野球選手の身体特性を明らかにしたので報告します。
背景です。
野球で障害が発生すると
このように選手もチームメイトも嫌な思いをすることになります。
こうした障害はじめはだれもが健常者です。
しかし、すこしずつ痛みが生じ最後には投げられないくらい痛みが増えます。
こうした重度障害になってから病院を受診する選手が非常に多く
こうなるとアンハッピーな状態になってしまうケースもしばしばあります。
したがって、我々はこうした健常な状態のうちに障害を予防し、
障害の進行を防ぐことが最も重要だと考えています。
障害を予防するということは言い換えれば、健常な状態を維持するということになりますが少年野球選手にとって健常な状態とはいったいどういうことなのでしょうか?
そこで本研究の目的ですが、
本研究では、投球障害を投球時の肩の痛みや肘の痛みと定義し、
過去も、現在も投球障害を経験してこなかった選手を健常群と定義しました。
そして、この両者を対比することによって、
健常群の身体的特徴を明らかにすることを研究目的としました。
方法です。
対象は検診に参加した小中学野球選手50名としました。
対象者全員に
理学検査
問診
両肘のエコー検査
を行い、それらのデータをデータベース化しました。
データベースの情報から、過去も現在も投球障害がなく
エコーでも正常だった選手を健常群と定義し、理学所見と合わせてロジスティック回帰分析を行いました。
ロジスティック回帰分析のイメージですが、今回数多くのフィジカルチェックを行いましたがロジスティック回帰分析を行うことで、これらのデータの中から健常群と関連するフィジカルチェック項目を統計学的に抽出することができます。
結果です。
これまでに投球障害を経験してこなかった選手の健常群は50名中23名で46%でした。
ロジスティック回帰分析の結果、この健常群に有意に関連性のあったフィジカルチェックは…
踵臀部距離が10cm以下であること。
片手フロントブリッジが安定していること。
肩甲帯内転角度が50度以上であること
股関節屈曲角度が120°以上であることでした。
考察です。
今回ロジスティック回帰分析の結果から導かれた回帰式より、考察をしていきたいと思います。
まずは踵臀部距離です。
踵臀部距離は健常群と有意に関連しました。
障害を経験したきた選手たちは、
踵臀部距離が10cmを超えることが多かったです。
回帰式を使って、健常である確率を求めてみますと
もしこの距離が10cmを超えると健常である確率はこのように下がります。
つぎは、片手フロントブリッジです。
これも健常群と有意に関連した因子です。
大腿前面の柔軟性が低下した状態で、
さらに片手フロントブリッジが不安定になった場合をみてみます。
投球障害を経験したきた選手たちは、片手フロントブリッジが不安定であることが多いです。もしこれが不安定な場合は、健常である確率は、このように下がります。
つぎは、肩甲帯内転角度です。
これも健常群と有意に関連した因子です。
大腿前面の柔軟性が低下し、片手フロントブリッジが不安定で
さらに肩甲帯内転が低下した場合をみてみます。
投球障害を経験したきた選手たちは、
肩甲帯内転角度が50度未満であることが多いです。
もしこの角度が50度未満になると、健常である確率は、このように下がります。
最後に、股関節屈曲角度です。
これも健常群と有意に関連した因子です。
大腿前面の柔軟性が低下し、
片手フロントブリッジが不安定で
肩甲帯内転機能が悪い状態に加え、
股関節の屈曲が悪くなった場合をみてみます。
投球障害を経験したきた選手たちは、股関節屈曲角度が120°未満であること多いです。
もしこれが120°未満である場合は、健常である確率は、このように下がります。
結論です。
これまでに投球障害を経験したことがない少年野球選手の身体特性を明らかにしました。
投球障害を予防していくためにはこうした健常な状態を維持していくことが重要だと考えられました。